【家紋・丸に三階菱】シンプルながら奥深い!甲斐源氏の象徴「菱紋」

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さて、本ブログ最初のネタはプロフ画像にも使っているこの家紋の話。

丸に三階菱

へいちゃん家の家紋「丸に三階菱」です。

「丸に三階菱(まるにさんかいびし)」とは、大中小3つのひし形を積み重ねた「三階菱(さんかいびし)」を丸で囲った形の家紋です。
ひし形を組み合わせて使う「菱紋(ひしもん)」の一種となります。

菱紋はひし形という単純な図形で出来ているので、古くから存在し、また、そのバリエーションも数多くあります。
ですので、それっぽい文様は身近で目にするのではないでしょうか?

そんな見たことあるようないような「菱紋」「丸に三階菱」を、ちょっと深掘りしてみましょう。

「有職文様」と「菱紋」

改めまして、三階菱とは、菱紋の一種です。
菱紋はその名の通り、ひし形を組み合わせて作られた紋のこと。

有名なのはなんといってもこれでしょう!

武田菱

ご存知、甲斐武田氏の家紋・「武田菱」ですね。

他にもこういうちょっときれいなデザインが入ったものもあります。

大内菱

こちらは周防大内氏の家紋・「大内菱」です。

ひし形とは水草の「ヒシ」から取られた名前だそうですが、図形としては単純な形なので、古くは紀元前から世界各地で紋様として使われてきました。
日本でも、縄文時代にはすでに土器の模様として描かれています。

王朝文化が花開いた平安時代の頃から、貴族たちの装束や持ち物に「有職文様(ゆうそくもんよう)」※1と呼ばれる紋様が使われるようになりました。
この紋様は、やがて「家」や「一族」を表すシンボルとしても用いられるようになります。

摂関期※2以降、貴族の間でも家柄による身分の違いが意識されるようになると、それぞれの家が独自の紋様を使い、ひと目で出自がわかるようにしました。これが「家紋」です。

武士の時代になると、戦場で敵味方を識別したり、一族の武威を示すために、家紋の重要性はいっそう高まります。
また、分家の際には、本家の家紋に少し変化を加えて使うこともあり、家紋の種類はさらに増えていきました。

へいちゃん
へいちゃん

菱文様は子孫繁栄や無病息災を願う縁起の良い文様として親しまれてきたとか。
武田氏や大内氏のような名門武家が自分たちの象徴として好んで使ったのもうなづけますね!

【用語解説】

※1:有職文様
平安時代以降の公家社会で、装束や調度品、建築物などの装飾に用いられた伝統的な文様。

※2:摂関期
平安時代中期、藤原氏が摂政・関白として、政治の実権を掌握した時代。

「三階菱」と「丸に三階菱」

さて、家紋の使用には特にルールなどはなかったようですが、武田氏をはじめとした甲斐源氏の多くが「菱紋」を家紋として使用していました。
「三階菱」を使っていた主な氏族である「小笠原氏」もそんな甲斐源氏のひとつ。

小笠原氏といえば、武家の有職故実に通じた名門中の名門。
源平の時代から明治維新まで、武士の歴史とともに生きた名門の名にふさわしい一族です。

小笠原氏の流れをくむ庶家の家紋には、三階菱系のものが多く見られます。
三階菱系の家紋の中で、有名な戦国武将が使用していたものというと「三階菱に五つ釘抜き」があります。

三階菱に五つ釘抜き

これは、三好長慶が使っていたものになります。三好氏は阿波小笠原氏の系統になりますね。
三階菱に「釘抜き紋」という別の紋を合わせています。

釘抜きとは「九城(くき)を抜く」、つまり城をたくさん攻め落とせるようにという願いがこめられています。
機内一円に大勢力を築いた三好長慶らしい家紋ですね。

そして「丸に三階菱」も小笠原氏に連なる支族たちがよく使用していた紋になります。
この「丸に三階菱」のように本家の家紋を「丸で囲む」という方法は手軽さもあってか、広く使われていたようです。

「丸に三階菱」を家紋として用いていた氏族の代表例としては、「跡部氏」が挙げられます。
「跡部氏」は「小笠原氏」の祖、小笠原長清の孫にあたる「跡部長朝」という人から始まった氏族です。

室町時代、甲斐国は守護家の武田氏が没落して争乱状態にありました。
跡部氏は当時、甲斐国守護代の職にありましたが、武田氏と対立し、専横を極めていたようです。

武田氏13代・信昌(武田信玄の曾祖父)の頃、跡部氏は排斥され、これを契機に、武田氏は戦国大名として力をつけていくことになります。

へいちゃん
へいちゃん

「甲陽軍鑑」で酷評されている「跡部勝資」もこの甲斐守護代家「跡部氏」の一員。
跡部勝資は武田勝頼の出頭人のイメージが強いですが、そもそも跡部氏は武田氏とは古くから因縁のある一族だったというわけですね!

まとめ

  • 「丸に三階菱」は、大中小3つのひし形を積み重ねた「三階菱」を丸で囲った形の家紋。ひし形を組み合わせて使う「菱紋」の一種
  • 「菱紋」は、ひし形を基本としたシンプルな文様で、古くから各地で使われてきた。子孫繁栄や無病息災を願う縁起の良い文様
  • 本家の家紋を「丸で囲む」手法は分家の家紋によく見られるアレンジ方法。「三階菱」を使う小笠原氏庶流の家紋には、三階菱系のものが多い

素朴なひし形から派生した「丸に三階菱」は、長い歴史と武家の物語を背負った奥深い家紋。
お墓参りや神社めぐりの際に、ふと紋に目を向けてみると、思わぬ出会いがあるかもしれませんね。

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